大学のサークルについて思うこと

湘南台駅周辺に桜が咲き始めると、今年もこの時期がやってきたと思う。新歓実行委員会としては文字通り繁忙期。大学の新歓シーズンである。2022年からは学校側に対面での新歓を許可され、運営の一部を担っているが、複雑な気持ちを抱いている。その理由は順を追って説明する。

私がSFCに入学したとき、COVID-19の影響を受けて、対面新歓なるものは存在しなかった。世間は緊急事態宣言だった。錯綜する情報の中で、オリエンテーションすらまともに受けずに、5月から開始される授業に臨んだ。サークルには5個程度所属し、居場所確保に励んでいた。夏休みが近くなると下宿OnlyのコミュニティやSNSの特定のコミュニティが、10~20人程度のメンバーを固め、我先にと居場所確保戦争の一線を退いて行ったことが分かった。

そのとき私は、いくつかのプロジェクトやサークルで友人に恵まれていたが、ひたすら続くオンライン大学下で居場所を見つけられない人がいることも承知していた。分断は露骨に発生しており、中には精神病を患うものもいたと記憶している。

そうするうちに秋になった。SFCでは秋入学を受け付けているため、もう後輩が入ってくると言うことになる。同期は皆、自分たちは置いてけぼりになるのか?と言う感慨を抱いていた。そこで、同期と新入生を対象にした独自の秋新歓を企画することにした。プロジェクトの進行ミスを散々やらかしたのだが、なんとかフォローアップしてくれたメンバーのおかげで、なんとかプロジェクトを遂行できた。そのご縁で、SFC新歓実行委員として1年の秋から活動することになる。

その次の年、2021年もオンライン新歓だった。それを受け、SFCだけでなく日吉キャンパスのオリ実と合同して、慶應義塾全塾の新歓実が発足する。(オリ実にオンライン新歓に対応できるスタッフが不足しており、SFCに助けを求めてきたからだ。)これまでにない試みとして、慶應全体のサークルを掲載する Circle Squareや慶應新歓ライブイベント Kei-Ori2021を開催した。

そして今年、2022年は待望の対面新歓が学校から許可された。関係各所、皆限界のところでスケジュールを調整しながら、3年ぶりの試みを叶えようとしている。SFCでは明日からの二日間が対面新歓期間である。

私はSFC新歓実行委員長に任命されているので、各サークルの見守りと摘発を行う必要がある。そのことに複雑な気持ちを頂いている。

元来、新歓実行委員会は「大学事務への活動申請を一括で行う」と言う中継ぎ者的なポジションだった。しかし、COVID-19の感染拡大防止と言う名目の元、今年は団体の摘発までやらねばならない。また、個人的には好きに新歓くらいさせたいと思いつつも、そもそも大学の敷地内なので、正式な申請をしていない団体には好き勝手させられない。個人的な気持ちと規範が釣り合わないのだ。

個人からすると、学内は規範が多いので、インカレの方が良いのでは?と言う結論になる。既にそのような結論を出し、インカレに流れていく人を私は観測している。

すると、学内のサークルに残って、新歓担当になったり、幹部を任されたりする人はメンバー不足で苦しむことになる。しかも、私の同期以下の担当者は、誰1人として対面新歓などやったことはないにも関わらず。

結果的に、「このサークルを守らねば」と言う優しさを持っている人が過労死レベルに達しながら、学内のサークルは回っていく。多分、明日僕が摘発せねばならないサークルも、きっとそのような人たちが中心になって、なんとか生きながらえていると言う状態だろう。そのようなことを考えると、とても気が重い。

新歓実もサークル側も団体の存続を目的としているが、一見すると相容れないように見えてしまう。果たして大学がサークルを持つということ自体必要なのか、一度考えるべき時期なのかもしれない。

参照

©️2023 Y.A.